ビジネスマナーの敬語は正しく使えている?心配な方もこれで安心!
日本語は話せますか?
と聞かれればそれはもうもちろん、日本で暮らしていれば当たり前に話せるようになっているはずですが
ビジネスシーンでの日本語の使い方は問題ありませんか?
といわれると急に雲行きが怪しくなってくることは、様々な人が経験しています。
社会に出る前に一通りのレベルで学校などで教わっていれば安心ですが、何故か社会に出てから自ら学ばないといけない不思議なものがビジネスシーンでの敬語です。
今回はビジネスシーンでもあたふたしないように、正しい敬語や謙譲語について見ていきましょう。
敬語の持つ役割
敬語は、時代が変わっても一貫して重要な役割をもっていますが、その役割は時代に応じて変化しています。
以前の日本では、敬語が上下関係を明確に表す役割を持っていた時代もありました。
その風潮からも
として認識されている方も多くいらっしゃいますが、時代に応じて敬語に対する考え方も変わってきました。
平成19年に文化庁より「敬語の指針」がまとめられました。そこには、現代の敬語は
など、意識に基づいて言葉を選択して良い、とされています。
これは相手のことを必要以上に尊大したり、見下すことなく、お互いに尊重する気持ちで敬語を使うことが重要ということです。
敬語は相手とのコミュニケーションを円滑にする
敬語は話し手がその場の人間関係や状況をどのように捉えているかを表現するものです。
例えば
田中様が、お見えになりました
との尊敬語は、話し手が田中さんを立てるべき人として捉えていることを表現します。
社会人は、年齢、性別、役職、社内社外など様々な人間関係があります。
状況に応じた適切な敬語を使えるようになるためにも、事前にどのような敬語を用いるとどのような人間関係が表現されるのか?を自らに問いかけ、考える姿勢が重要です。
そして年配の方ほど、言葉遣いに意識が向いています。
なんとなく敬語を使うことで相手を不愉快にさせないよう、日頃から言葉の持つ意味や表現に気を配り、適切なコミュニケーションを取ることを心がけましょう。
敬語の種類
敬語は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の大きく3つに分けられます。
文化庁が発表した敬語の指針では、謙譲語が「謙譲語Ⅰ・Ⅱ」に分けられ、お茶やお料理のように「お・ご」をつけて丁寧に表すものを「美化語」として発表されました。
丁寧語 | です・ます | 丁寧語 |
美化語 | お酒・お料理 | 丁寧語 |
尊敬語 | いらっしゃる・おっしゃる | 尊敬語 |
謙譲語Ⅰ | 伺う・申し上げる | 謙譲語 |
謙譲語Ⅱ (丁重語) | 参る・申す | 謙譲語 |
丁寧語
話しや文章の相手に対して丁寧に述べるもの。
海外へ行ってくる → 海外へ行ってきます
このように文末を「です、ます」に変えることで丁寧な表現になります。
尊敬語
相手を高めて、敬意を表す表現。
<行為者>を立てる。
部長がこちらへお越しになります
これは「部長がこちらへ来る」と同じ内容です。
<行為者>である部長を立てる敬語として働いています。
謙譲語Ⅰ
自分側から相手側に向かう行為・ものごとなどについて、その<向かう先>の人物を立てて述べるもの。
部長のところに伺います
「部長のところへ行きます(訪ねます)」と同じ内容です。
<向かう先>である部長を立ててる述べ方です。
部長より品物を頂戴しました
「部長より品物を受け取りました」と同じ内容です。
品物を渡すという点では部長は<行為者>になりますが、もらう側、受け取る側からの視点で見れば、部長は<向かう先>になります。
謙譲語Ⅱ
自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の<相手>に対して丁重に述べるもの。
私は、明日から海外に参ります
「私は、明日から海外に行きます」と同じ内容です。
自分の行為である「参る」が話し相手への丁寧な表現として述べられます。
✖️ (あなたは)どちらから参りましたか?
✖️ 部長は海外に参ります。
これらは不適切な敬語になります。
謙譲語Ⅱは<自分の行為>に使うものです。
相手側の行為や、立てるべき人物の行為に使うのは誤っていますので注意しましょう。
正しくは、尊敬語で
◯(あなたは)どちらからいらっしゃいましたか?
◯ 部長は海外にいらっしゃいます
謙譲語Ⅰ・Ⅱはどう違うの?
類似点もあるため謙譲語としてまとめられていましたが、性質の違いもあるため謙譲語Ⅰ・Ⅱと分けられました。
このようになります。
また、立てるのにふさわしい<向かう先>である時に謙譲語Ⅰを用います。
◯ 部長のところへ伺います
✖️ 後輩のところへ伺います
向かう先が立てるのにふさわしい対象であるか。
後輩は立てなくても良いので、ここでは謙譲語Ⅰは使いません。
◯ 部長のところへ参ります
◯ 後輩のところへ参ります
謙譲語Ⅱは話をしている相手への敬語を表現するため、<向かう先>が立てるのにふさわしいかどうかではなく使用することができます。
ビジネスの場でよく使われる敬語の一覧
よく使う言葉 | 丁寧語 | 尊敬語 | 謙譲語 |
---|---|---|---|
分かる | 分かりました | お分かりになる ご理解頂く | 畏まる 承知する |
する | します | される なさる | 致す させて頂く |
座る | 座ります | お掛けになる | お座りする 座らせて頂く |
言う | 言います | 仰る 言われる | 申し上げる 申す |
待つ | 待ちます | お待ちになる お待ち下さる | お待ちする |
伝える | 伝えます | お伝えになる | 申し伝える |
会う | 会います | お会いになる 会われる | お目にかかる |
いる | います | いらっしゃる お出でになる | おる |
行く | 行きます | いらっしゃる お出でになる | 伺う 参る |
帰る | 帰ります | お帰りになる 帰られる | おいとまする |
知る | 知っています | ご存じだ お知りになる | 存じ上げる 承知する |
聞く | 聞きます | お聞きになる | 伺う 拝聴する |
与える | あげます | 下さる お与えになる | 差し上げる |
見る | 見ます | ご覧になる | 拝見する |
食べる | 食べます | 召し上がる お上がりになる | 頂く 頂戴する |
敬語を使う時の注意点
二重敬語
一つの後に対して、同じ種類の敬語を二重に使ったものを二重敬語といいます。
「お帰りになられる」は、帰るをお帰りになると尊敬語にした上で、さらに尊敬語の〜れるを加えたものです
一般的には不適切な表現ですが、習慣として定着しているものもあります。
お召し上がりになる
お見えになる
お伺い申し上げる
敬語連結
2つ以上の語をそれぞれ敬語にして、接続語詞「て」で繋げているものは二重敬語ではなく、敬語連結といいます。
「ご覧になっていらっしゃる」は
見ているの「見る」を「ご覧になる」に
+
いるを「いらっしゃる」に
このようにして繋げたもの
つまり「見る」「いる」という2つの語をそれぞれ敬語にして繋げたものです。
この場合は二重敬語には当たりません。
敬語連結は敬語の結びつきが不明でない限りは、基本的に許容されます。
- 敬語は上下関係を示すものではなく、お互いに尊重する気持ちが大切
- 敬語は話し手がその場の人間関係や状況をどのように捉えているかを表現するもの
- 誰を立てて表現しているのか?立てる相手を意識して適切な敬語を選べるように練習しましょう